1.私が雨を嫌いな理由

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「いっ!?」 相手は突然の痛みに変な声を上げて固まった。咄嗟に私の手を振り払い、髪を抜かれた辺りを庇うように体の向きを変えて私を睨んだ。 殴られてもしかたないくらいのことをしている自覚はあったのでそれに備えて身体の動きを注視したけれど、身を躱す必要はなかった。 彼は完全に面食らった顔で、目をしばたきながら私を見下ろしているだけだった。私はつかんだ髪の数本を先生の前に突き出した。 「先生、根本見てください。たぶん、本当に地毛ですよ。」 結果はどちらでもよかった。 染めていたのなら彼が諦めればいい。染めていないのなら教師が諦めればいい。 でもどちらかといえば、私の望んだ結果だった。 綺麗な髪だから、ベタベタの黒塗りなんかにしてしまうのはもったいない。大貴以外の人間に動かされることなんてほとんどない私にそう思わせた。ナオの髪は、それくらい綺麗だった。
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