第8章

36/38
3641人が本棚に入れています
本棚に追加
/294ページ
あれから、しばらく経って・・・ トシは仲間と一緒に小さな運送会社を立ち上げ、桃井は優のお店の従業員になった。 琴子から連絡があったのは、そんな頃だ。 何でも、通帳に身に覚えのないお金が振り込まれているとの事で、それを使って良い物かどうか迷って連絡をくれたらしいのだが・・・その金額を聞いて驚いた。 屋敷にいた5年分として考えても、十分過ぎるほどの金額・・・20代半ばの女性にとっては、大金と言えるお金だった。 振込主はもちろん、藤堂蒼哉 ―― 琴子が本当に欲しかったのは、お金ではなかったようだが・・・それは蒼哉にとっても同じだったのだろう。 近い将来、離れる事になる2人・・・ あの頃の蒼哉に出来る事と言えば、それ以外になかったのかもしれない。 たとえ、彼の本意ではなかったとしても・・・ 蒼哉が、いかに琴子を大切に思っていたのか・・・その気持ちだけは、痛いほど分かった。
/294ページ

最初のコメントを投稿しよう!