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「・・・こ先生。」
「・・・・」
「・・・璃子先生!」
「あぁ、みっちゃんか・・・」
「あぁ、じゃないですよ。抜け殻みたいにボーっと空ばっかり見てたら、誰だって心配するじゃないですか!」
「ごめん・・・ちょっと考え事を。」
次作のプロット作りをしているとでも思ったのか・・・みっちゃんは安堵のため息を吐くと、テーブルの上に散乱したチラシの山をワサワサと片付け始めた。
「今日は、璃子先生に差し入れを持って来たんですよ。」
「・・・差し入れ?」
「ええ、上川さんから。お疲れでしょうから甘い物でも持って行ってあげて、って。」
そう言って、みっちゃんが差し出したケーキの箱には見覚えがあった。
「うわー、ベリーベリーのショートケーキ?」
「フフッ・・・さすが、上川さん。先生の好物は何でもご存じなんですね。」
「・・・・」
私がココのケーキを好きな事を知っているのは、上川さんだけじゃない。
以前、仕事の帰りに買って来てくれたあの人を思い出しながら、また痛み出す胸にそっと手を当てた。
「どうしたんですか?璃子先生・・・食べないんですか?」
「ううん・・・喜んでいただくわ。」
「フフッ、どうぞ召し上がれ。今、コーヒーを入れますから。」
「二季草」の増版の決定を報告しに来たみっちゃんは、ケーキを頬張る私を見つめながらご機嫌な表情を浮かべている。
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