* エピローグ *

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「それにしても、よかったですね。一年間、頑張った甲斐がありました。」 「・・・うん。」 「しばらくの間はゆっくりと短編の仕事をして、また新しいプロットが完成したら長編に挑みましょう。社長も期待している事ですし。」 「・・・そうだね。」 半年前に「二季草」を書き終えた私は、また短編の執筆生活に戻っていた。 とはいえ、心を揺り動かされる衝動が湧いて来るわけでもなく、ただ無難な物語を紡ぐだけの生活には何の彩りも感じられない。 それでも書かずにはいられなかった。 何かをしていないと、深い深い谷間に落ちてしまいそうだったから・・・ 一見、落ち着いて見える心の奥底では、いつも鬱屈とした何かが悲鳴を上げていたのだ。 「璃子先生・・・本当にお変りになられましたね。以前の担当者は皆、先生に執筆してもらうのに相当な苦労をしたようですけど、今は何も言わなくても締め切りを守って下さいますし。」 「フフッ・・・ソレって、嫌味よね?」 「まさか・・・褒めてるんですよ。あれからずっと書きっぱなしでしたし、この辺で少しお休みを取られてもいいんじゃないか、と。」 「休み?・・・いらないわよ、べつに。」 そう返事をすると、みっちゃんは「あ、そうだった!」と言いながら、鞄の中から一通の封書を取り出した。
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