* エピローグ *

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「ずっと、探してた。何処にいても、何をしていても、いつもオレは・・・いるはずのないオマエの姿を探して・・・」 観光客の若い娘の声が聞こえる度に振り向いて、違う顔を見てはまた心が沈んで行く・・・そんな日々は、後悔の二文字で埋め尽くされた。 「璃子・・・もう二度と、オマエを離したくない・・・」 言いながら、泣いている自分に気づいた。 彼女の頬を伝う涙が、滲んで見える。 「ねえ、朔哉さん・・・知ってる? 小説家って、何処にいても仕事が出来るのよ。だから・・・」 「いいのか?一生、帰れなくなるけど?」 「フフッ、ダメだと言われても、私・・・決してあなたから離れないわ。」 沈み行く太陽の光に照らされて、重なり合う2つの影が次第に長く伸びて行く。 「璃子・・・ずっと、愛してる。」 「私も・・・」 『君の愛に酔う』 触れ合う唇が、まるで紫の藤の花言葉のごとく(うごめ)いて・・・ 西陽に照らされたオリーブの島の片隅で、一つに重なった思いが・・・また、2人の時を刻み始めた。 ~ fin. ~
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