つながり

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 その手紙を見つけて、わたしは駆け寄った。  すこし色づいた紫陽花の下に挟まっていた青空みたいな色のそれをさっと拾い上げて、すぐそばのシーソーに腰掛ける。綺麗な青から白く透ける薄い便箋を抜き出して、スカートのプリーツの上に広げた。  相変わらず筆圧の薄い、几帳面な文字が並んでいる。前よりもちょっと長いからか、所々筆圧が突然濃くなるところがあって、いろいろな事に思いを巡らせながら少しずつ、ゆっくり考えながら書いてくれたのかな、とくすぐったい気持ちになった。  一通目もそうだったけれど、二通目からはなおのこと、その文字や内容から繊細な、でも知識があってやさしい人であることが感じられた。即物的だとは自分でも思うけれど、それでも、ただの生真面目として単純処理してしまわないでくれたこのひとに、わたしは好感を抱いた。  きっとこころの豊かなひととは、こういうひとのことを言うのだ。そしてそう思うのと同時に、わたしの書いたような感じの悪い、ぶっきらぼうな書き方はやめよう、とわたしは誓った。手紙を置いて学校に着いてから、随分と後悔したのだ。 (良い友達)  わたしは、その部分をこころの中で繰り返した。そうなれるといいな。  便箋を封筒にしまって、それから一度、降り出しそうな曇り空にかざしてみてから、そっと内ポケットに仕舞った。予報では雨、と朝食の時に見たニュースは言っていたけれど、わたしの心中は、その封筒と同じ色の空のように晴れやかだった。  それから何度か手紙を交換するうちにすっかり紫陽花は咲き、毎朝の天気予報は梅雨入りを宣言した。
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