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手を掛ければ、微かにきしむ音を立てて隙間が、ぐっと力を入れると、かんたんにおおきく扉は開いた。さっきまでは無かったはずの、外への扉。
外に、出られる。
それがわかると、わたしは突然こわくなってきた。
外に、この白い空間に、出ても大丈夫なのだろうか?
わたしの目には、白しか映らない。
この鳥籠や開いた扉の影は見えなかった。つまり、影が映るような実体を持ったものは、わたしには無さそうに見えていた。出たところで足裏に触れるものは無く、ただただ空を掻くことになってしまうかもしれない。
その恐怖にわたしは慄いた。
そんなことになってしまうなら、今まで通り、この鳥籠の中で構わなかった。
だけど、うつくしい声が歌う。
さっきと同じ、たくさん歌った調べを繰り返す。
そうしてわたしを呼んでいる。
(行かなきゃ)
でないと、きっと目が覚めた時に後悔する。つよくそう思った。
わたしは一度、声に応えるように歌った。不思議と、恐怖に浮き立つ心も落ち着くようだった。
(大丈夫、)
意を決し、一度手を強く握りしめると、思い切って鳥籠から飛び降りた。
――落ちる!
やはり足裏に触れるものは無かった。先から無くなっていきそうな浮遊感に背筋をつめたいものが駆け上がる。あまりの恐怖にぎゅっと目をつぶってしまう。
でも、逃げちゃだめだ。
出ると決めたのはわたしなのだから。
そう言い聞かせながら、必死で瞼に力を込める。
開かない、開きたいのに、本当はやっぱり開きたくない?
――そんなはずはない。
思った瞬間、それまでの抵抗が嘘のように、すっと目が開いた。
青空。
まっさらな青が目に染みていく。
(きっと今のわたしの目の色は青い、この青と同じ色に染まっている)
うつくしい声が、わたしの周りを飛ぶ。気づけば落下する嫌な浮遊感は無かった。
見えない小鳥と同じように、わたしは雲ひとつない青空を飛翔していた。
(これなら、どこまでだって行ける)
根拠もなくそうおもった。根拠のないことがすがすがしくて、気持ちよかった。
小鳥は笑うようにさえずる。
気がつけばわたしも同じ声で笑っていた。
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