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梢のおかげで、いくらか濡れてなさそうな花壇の縁にわたしと咲は並んで腰掛けることができた。
ほんの少しの沈黙。
それから咲は口を開いた。
「みはるはさ、あたしが運動してるの見るの、好きでしょ」
それは、わたしに尋ねているのではなくて、確認する声音だった。いや、もっと言えば、彼女はわたしの返答を必要としていなかった。確信していたから。
わたしも、恥ずかしさを感じる暇はなかった。咲は真っ直ぐにわたしを見つめていた。数日ぶりのその視線に、わたしは彼女らしさを感じた。喉奥の違和感が霧散した気がした。
「だから、がんばってたの。…ずっとそうよ。みはるにもっといいとこ見せたかった」
そう言ってはにかむように笑うと、並んで腰掛けた花壇の上に左足を上げた。無事な左腕で、彼女はその膝を引き寄せると、わたしの目から視線は逸らさないまま、こてりと頭を乗せた。それから、不意に猫のようにその目を細めて、咲は楽しそうに笑った。
「結構、上手くいってたよね? バスケットボールはもともと好きだったけど、こんなに上手くなれるなんて、昔は思ってもなかった」
まるで呟くように言葉を放ると、咲は目を伏せた。その目元に、わたしはほのかな苦みを見て取った。
「みはるは頭が良いから。だからずっと不思議だった。なんで私と仲良くしてくれるんだろう、って」
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