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サアアアアア――……
「あら、雨が降ってる。これじゃあ洗濯出来ないわね……」
「君は、雨が嫌いかい?」
「あんまり好きじゃないわ。だって、外へ行くにも傘をささなきゃ濡れてしまうし、洗濯物も乾かない」
「ふふ。そうかい」
そう言って、貴方は微笑んだ。暖かいお日様の光みたいな笑顔。やっぱり私は晴れの方が好きだわ。
晴れたら貴方と散歩に行けるわ。川原を歩いて、お花を見て、お散歩しているワンちゃんを、2人で可愛いわね、なんて言うことも出来る。
「僕はね、雨が好きなんだ」
「どうして?」
「雨はね、天国にいる人達が、僕たちのために降らせてくれる、恵みなんだよ。僕らが生きていけるようにって、花や木を元気にしたり、地上の汚れを流してくれたり……」
「天国の人? だったら雨はその人達の涙じゃないかしら。死んでしまったのが悲しくて、泣いているのかもしれないわ」
そうよ、私だったら泣いてしまうわ。死んでしまったら、もう、貴方と会えないもの。きっと皆、愛しい人に会えなくて泣いているんだわ。
「そうかな? 天国の人達は、きっと悲しくなんかないさ」
「どうしてそう言い切れるの?」
「そうだなあ……」
貴方はしばらく考えて、どうしてだろうね、と、困ったように微笑んだわ。ほら、答えられないじゃない。
「なあ、散歩に行かないかい?」
「ええ? でも、雨よ。濡れてしまうわ」
「傘をさしていこう。雨の中も結構楽しいさ」
正直、私はあまり行きたくなかったけど。
でも貴方が、本当に行きたそうに笑っているから。
仕方ないわね、さあ、行きましょうか。
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