3人が本棚に入れています
本棚に追加
ザアアアアア――……!
速く、速く、行かないと……!
雨の中を、懸命に走るわ。濡れるのなんて気にしている場合じゃないの。あの人が待っているの。あの人に会いたいの!
私の手には、くしゃくしゃになった紙が握られている。あの人からの手紙よ。初めての。
そこには、こう書いてあったわ。
大切な君へ。
雨は、好きかい? 僕は大好きだよ。
前に、君は言ったね。雨が天国の人の涙だと。
それは僕が思いもよらない意見で、少しびっくりしたんだ。それで、考えてみたんだよ。
やっぱり、雨は恵みだと、僕は思う。きっと天国の人は、愛しい人に会えないことを悲しんだりしないんだ。いつか会えることを信じて、その人に幸せに生きてほしいと、願うと思うんだ。
何故そんなことわかるのかって、僕が今、そう思っているから。
ごめんね。僕はもうすぐ死にます。
どうやら、治せない病気にかかってしまったらしいんだ。
出来るだけ、最後の時まで、君と一緒にいたかったけど。でもやっぱり、君の涙は見たくないから。
きっと僕がいなくなったら、君は僕のことを忘れてしまうだろう。それは仕方の無いことだ。だから、自分を責めないでほしい。
ごめん、隣にいられなくなって。
ごめん、毎日を教えてあげられなくて。
僕が天国にいったら、毎日は無理だけど、君のために雨を降らせるよ。
君が、元気でいられるように。
けど、出来るだけ、長く僕を覚えていてほしいってエゴもあるのは、許しておくれ。
最後に、今まで本当にありがとう。
どうか、どうか幸せに。どうか元気で。
ずっとずっと、愛しています――
最初のコメントを投稿しよう!