雨を飲む

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ザアアアアア――……! 速く、速く、行かないと……! 雨の中を、懸命に走るわ。濡れるのなんて気にしている場合じゃないの。あの人が待っているの。あの人に会いたいの! 私の手には、くしゃくしゃになった紙が握られている。あの人からの手紙よ。初めての。 そこには、こう書いてあったわ。 大切な君へ。 雨は、好きかい? 僕は大好きだよ。 前に、君は言ったね。雨が天国の人の涙だと。 それは僕が思いもよらない意見で、少しびっくりしたんだ。それで、考えてみたんだよ。 やっぱり、雨は恵みだと、僕は思う。きっと天国の人は、愛しい人に会えないことを悲しんだりしないんだ。いつか会えることを信じて、その人に幸せに生きてほしいと、願うと思うんだ。 何故そんなことわかるのかって、僕が今、そう思っているから。 ごめんね。僕はもうすぐ死にます。 どうやら、治せない病気にかかってしまったらしいんだ。 出来るだけ、最後の時まで、君と一緒にいたかったけど。でもやっぱり、君の涙は見たくないから。 きっと僕がいなくなったら、君は僕のことを忘れてしまうだろう。それは仕方の無いことだ。だから、自分を責めないでほしい。 ごめん、隣にいられなくなって。 ごめん、毎日を教えてあげられなくて。 僕が天国にいったら、毎日は無理だけど、君のために雨を降らせるよ。 君が、元気でいられるように。 けど、出来るだけ、長く僕を覚えていてほしいってエゴもあるのは、許しておくれ。 最後に、今まで本当にありがとう。 どうか、どうか幸せに。どうか元気で。 ずっとずっと、愛しています――
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