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ザアアアアア――……!
走って、走って。
知っている限りの病院を巡って。
やっと見つけたわ。貴方のことを。
けれど、貴方はもう、笑ってくれない。
「い、や……! いやああああああっ……!!」
ああ、間に合わなかった。ごめんなさい。どうして。ごめんなさい。
好きよ。私も、貴方を愛しているわ。嫌よ、嫌。忘れたくない。絶対に、忘れちゃ駄目なの。
冷たい雨が、空から降ってくるわ。
そうね。貴方の、大好きな天気ね。雨の日に逝ってしまうなんて、本当に好きなのね。
どうしよう。また、雨が嫌いになってしまいそうだわ。ああでも、雨が降ったら、貴方のことを思い出すはず。それに、貴方が雨を降らせてくれるのよね。
そう考えたら、もう私は、きっと雨を嫌いにはならないわ。
ナア……ナア……
小さな声が耳に入ってきて、随分小さな猫を見つけたわ。雨に濡れて、泥に汚れて。
でも、あの人と似た、焦げ茶色の毛並みの猫。
真っ直ぐに私を見上げて、また、ナアと鳴くものだから。
思わず抱き上げて、じっとその瞳を見つめたわ。
そうしていると、その子の顔に、ぽつりぽつりと雫が落ちていて。
「独りは寂しいわよね……。あなた、雨は、好き?」
「ナア」
「そう……」
私、その子を連れて帰ることにしたわ。
少しでも、あの人を思い出せるような、きっかけを。
そうね。あなたには、レインという名前をつけましょう。
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