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サアアアアア――……
今日は雨が降っているわ。
私、雨は好きよ。この大地と、そこへ生きる私たちへの恵みね。
だから、猫ちゃんには、レインって名前をつけたわ。
あの子には、何個目かの名前かもしれないけれど。
ああ、そうだ。今日も、雨を……。
私はすぐに、色んなことを忘れてしまうわ。
猫ちゃんの名前も、一昨日の自分も。
それはもうしょうがないことね。だから私は、無理に自分を留めようとは思わないわ。
けれど、そんな私が、ずっと大切に持っているものがあるの。
くしゃくしゃになった、誰かからの手紙よ。
所々字も滲んでしまっているけれど、私を大切にしてくれていた人みたい。
そして私も、その人を大切に思っていたに違いないわ。
けれど私は、やっぱり覚えていなくて。
でも、雨の日は、どうしてか凄く懐かしい気持ちになるの。愛しくて、切ないような……。
今日も私は、雨を飲むわ。
天国からの、その人からの、恵みなの。
それに、もしかしたら。
雨を飲み続けていたら、大切な、大切な思い出が、蘇ってくるような気がするから。
私が愛した人との、愛しい日々の記憶がね――
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