紛失

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紛失

 ある日、いきなり祖母ちゃんが実家から家出してきた。  突然の来訪に、父さんも随分心配して問い質したのだが、祖母ちゃんは怒った様子で一言だけ「指輪を無くされた」と言った。 「どうやら、何処かで結婚指輪を、親父が無くしたらしい。それでお袋が切れたようだ。」  と…突発的に家を飛び出したは良いものの、他に行く所も無く、息子である父さんの所に飛び込んで来た祖母ちゃんから、何とか話を聞き出したようで、頭を抱えて僕と母さんに報告してきた。  別に僕は祖父ちゃんも祖母ちゃんも嫌いでは無いので、いつまで居て貰っても構わないのだが、母さんと祖母ちゃんはあまり仲が良くない。 「だって…いつまでいるのよ?」  祖母ちゃんがリビングにいない事を良い事に、母さんがそう父さんを問い詰めていた。 「ちょっと待ってくれよ。親父にも話を聞きたいし。」 「私、お義母さんの世話なんて出来ないわよ。まだ孝だって高校生なのに…」 「だから、ちょっと待てって言ってるだろ!ともかく親父と話してくるから!」  と…父さんと母さんまで喧嘩が始まってしまう。
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