0人が本棚に入れています
本棚に追加
『雨は嫌いだな…』
降りしきる雨音に掻き消されながらも
俺はそんなことを呟いていた。
現在 高校3年生
大学の勉強に励んでいたが
夏休みだけでも祖父母のいる田舎で勉強したら
集中出来るのではないかと思い
父と母を説得し祖父母の家へと向かっていた。
しかし
祖父母の家に向かうにつれ雲行きは怪しくなり
バス停につく頃にはどしゃ降りになっていた。
しかも
バス停の時刻表には時間が書いてかったため
いつ来るかわからないバスを
雨宿りも兼ねて待っているという状況だった。
あまりにも暇だった俺は
スマホを取り出し
今いるバス停について調べてみた。
そこには意外なことが書かれていた。
【雨が「降っている間」少女の霊が現れる!】
多少の興味を持ちながら
ふと自分の横に視線を移すと
先程まで誰もいなかったはずの場所に
可愛い少女が座っていた。
少女は俺に気づくと満面の笑みを向けてきた。
突然の事にびっくりしたが
俺は質問をしてみた。
『その…どちら様ですか?』
少女はビックリしたように目を丸くしてこちらを見ると
嬉しそうにこう答えた。
『ここら辺は人がいないから、なかなか人と会わないんだよね~!』そのまま続けて『都会からきたの?だったら都会の面白い話聞かせてちょうだい!!』
と答えてくれた。
初対面の少女の笑顔にはどこか安心できる何かがあった。
そのせいか俺は少女に都会の話をしてあげることにした。
でっかいビルがあること、
美味しいスイーツの店があること、
たまに有名人にも会うこともあること…
色々な話を続けていると
雨が上がってきたことに気がついた。
すると
遠くからバスの音が聞こえてきた。
隣の少女に問いかけた。
『君もバスに乗るんだろ?』
隣を見るとその少女の体は薄れていた。
『ごめんね…もう時間みたい
また…会いに来てね!』
そう言うと少女は俺の前から姿を消した。
意外にも恐怖なんてものは無かった。
あの子は…幻だったのか…?
雨が「降っている間だけ」現れて…
スマホにあった
「」の意味に気づいた俺は
『まだ降っててもよかったのにな…』
俺は雨上がりの綺麗な日差しが差し込む中
そう思っていた…。
バスに乗り込むと
俺は少女が何者なのか考えようとはしなかった。
少女の喜ぶ顔を思いだすとどうでも良くなってたからだ。
バスが発進し
水たまりの多い道路を車窓越しに見ながら
独り言を呟いた。
『案外、雨も悪くないな。』
最初のコメントを投稿しよう!