序章

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「大丈夫だよ」  彼は自分自身が出せる、一番の力強い声で語りかける。一層、少女を抱きしめる手に力を込めながら、 「大丈夫、お前のことはお兄ちゃんが護ってやるから」  彼の目じりから一筋の雫が零れ落ちる。紛れもなくそれは涙だった。 「おにいちゃん……っ」  少女はお兄ちゃんと呼ばれた彼の胸に顔を埋めると、安心したように溜めていた涙を流し始めたのだった。  彼は少女を抱きしめたまま、窓の外にある曇り空を眺めていた。
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