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この世には、誰かがやらなくてはいけないことがある気がした。
だから僕は、それを良き理解者でもある五条礼一と一緒にアクションを起こしたのだが、どうやら先生の機嫌を損ねてしまったらしい。
「お前らの問題行為には、つくづくうんざりだ」
僕の目の前にいる中年の体育教師、永谷園は辺りに唾を撒き散らしながら説教を開始する。
「どうして商店街で暴れたのか、理由はあるのか? いいやあるわけがない!」
僕と礼一がどうして生徒指導室というお堅い空間で怒られているかを説明するには些かの時間を拝借することになるので、大事をとって割愛とさせてもらう。
「理由はある」
僕の隣で正座する五条礼一は静かに口を開く。
身長一七七センチの長身に細身ながら筋肉質なボディー、男らしい低音ボイスに巷で有名なイケメンフェイスを兼ね備えた完璧超人である礼一は、三十分も正座していたにも関わらず痺れた様子も見せぬまま立ち上がる。
立ち上がると永谷園を見下ろす形になるので、永谷園の口から『うっ』と声が漏れた。それほどに礼一は威圧感を放っている。
「理由はある。それは――」
礼一は静かに目を閉じる。長い付き合いの僕には分かる。礼一が何を言おうとしているのかが、手をとるように理解できる。
「古井三咲が力になってあげたいと言ったからに決まっている」
声高らかに言い放つ礼一は力強く拳を天に掲げる。
やっぱりそうか、隣で正座しながら天を仰ぐ。
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