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第2章 トイレの噛み様
うちは千代伊(ちよい)。友達が薄暗い夕方、外で遠巻きにうちを見かけた時、あまりにも猫背で「アウストラロピテクス?」と言われたことが何度もある26才の女の子。要領が悪く、先輩上司の話によく「ついていけてないです。ちょいと待って下さい」と遮るので、「出た!千代伊の“千代伊”と待って!」と言われてる。そんなうちがまた人生最大級の試練を迎えている。
カラカラカラ・・・。乾いた音だけが虚しくトイレの中に響く。いくらトイレットペーパーの芯を回してもない。周りを見回してもやはり、紙が無いのだ。
「あーもう。これで二度目よ?どうなってんの、ここのトイレ?職場のオッサン連中の頭でも、もうちょっと“かみ”があるわよ!このハゲトイレ!」
千代伊が職場の上司の頭の過疎化を叫んでいると、ガタッとまた千代伊がいるトイレの個室に何かが落ちてきた。
「オーマイペーパー!いや、オーマイゴッド!」
なんとまたトイレットペーパーが落ちてあったのだ。
「誰かいてるん?」千代伊は思い切って聞いてみた。
すると、「誰もいましぇん」と微かではあるが確かに聞こえた。
千代伊は思わず呟く。「いや、いてるやん。ほんで、やっぱり神ってる。いや、今回は“噛み”ってる。ありがとうトイレの“甘噛み”様」
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