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今週から梅雨入りしたとニュースで聞いた。
ベランダにできた水たまりから、ピシャンと雨音が聞こえる。
雨音に誘われるように、ふと彼を想う。
結局『大丈夫です』と言えなかった心残りと一緒に。
その度に、あの箱を開けて手紙の匂いを嗅いだ。
紙とインクの匂い。
私にとっての、彼の匂い。
何度も何度も開け閉めするから、インクの匂いはすっかり消えてしまった。
もう彼の匂いがしない。
あれから何度自分に言い聞かせただろう。
『どんなに焦がれても、抗ってみても、ダメなものはダメなんだ』と。
今でもチクチクと胸を刺す言葉。
私はちっとも潔くなんかなかった。
せっかく彼に言ってもらったのに。
潔い私を尊敬してもらったのに……。いつまでも前に進めず、彼の言葉に縋っている。
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