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彼との出会いは何がきっかけだっただろうか……。 小さな雑誌の、小さな詩集のコーナーで彼の詩を見つけた。 それは、私にとって初めての経験ともいえる、溢れるほどの感動を運んでくれるものだった。 早速、編集者に問い合わせ、彼にファンレターを書いた。 そして丁寧な返事をもらった私は、浮かれ喜び、返事を返す。 こうして拙い文通が始まった。 家に帰ると、毎日ポストを覗く。 そこに届く1通の手紙。心躍る瞬間。慌てて開く封書。 彼の世界がそこにあった。 決して長い文章ではないけれど、そこはいつも暖かく、触れる度に幸せを感じた。 私の手紙はいつだって、他の人が読んだら、面白くもない退屈な話題だった。 『今日、不思議な生き物を見つけましたよ』 『そよ風が吹いて、木の葉がさわさわと揺れていました』 『書店には置かれていないけれど、素敵な本があります。大好きな作家さんです』 『こんな歌が好きです。こんな絵が好きです』 彼はいつだって真摯に受け止めてくれた。 つまらない、って切り捨てるんじゃなくて……、暖かい言葉で一つ一つ丁寧に。 そして彼は 「雨が好きです。雨の日に出かけるのは、案外楽しいですよ」 そう言った。
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