依頼

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夕暮れの放課後。空には先程までの真っ赤な太陽はなく、優しい夕日が顔を出して雲をオレンジ色に染めていた。 時折心地よい風が吹き、初夏の暑さを忘れさせてくれる。 校門を背にそんな事を思った。 「もう一度言う。 橋愛(はしあい)は自殺じゃない」 目の前の人物は力強くそう言ったが、どうにも話が読めない。 橋愛は勿論知っている。昨日屋上から飛び降り自殺をした生徒だ。その事は今日の朝の全校集会で聞いた。 しかし自殺では無いとはどういう事だろうか? 目の前の人物の表情は真剣そのものだ。すでに制服は着替えたのだろうか、デニムのパンツを履き真っ白いTシャツがよく似合っていた。 短髪の真っ黒な髪の毛が微かに風で揺れている。 「ちょっと待ってくれ」 そう言ってある物を取り出そうとポケットの中に手を突っ込んだ。 今日はまだ見ていないんだったな。
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