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「敗者の罰って感じだな」
「そうですね」
お互いにしんみりとした空気になってしまう。しかし、そんな中、遠野が一歩前進して決意を固めたように叫んだ。
「大好きだーーーーー!!!」
校内に響き渡る幼稚な大声。しかし、それを見た喜多川も一歩前進して言葉を叫ぶ。
「大嫌いだーーーッッ!!!」
遠野にも負けないくらいの大声で喜多川が叫ぶ。奇妙な連鎖である。
「なんだよ、それ」
その発言に呆れてしまう遠野。
「でも、諦めない!」
それでも、新たな決意を宿った喜多川の表情は清々しい表情だった。
「頑張るねぇ」
「先輩は諦めちゃうんですか?」
両極端の精神状態の二人。
「大学行ったら新しい恋でも探すよ」
「まぁ、それがベストかもって感じですね」
それでも、二人は前を向く事を決めた。
「まぁ、あれだ、喜多川は頑張れよ」
「はい。ありがとうございます!」
失恋話に終着が見えそうな時に、新たな来訪者が屋上に出る扉を開けた。
「こら、なに、大声出していちゃいちゃしてるのよ? ミイラ取りがミイラになってどうするのよ?」
「いちゃいちゃなんてしてません!!」
やって来たのは、本日卒業した女生徒、仲村(なかむら)だった。遠野と喜多川とは同じ部活の一員である。喜多川は部員メンバー集合で遠野を呼びに来たのを忘れてきた。
「とにかく部長が全員呼んでるのよ。後は、貴方達だけよ」
「悪かったよ。仲村さん」
仲村の呼び掛けに申し訳なさそうに同調して、屋上から動こうとする。それに合わせて喜多川も動き出す。そして、屋上から下の階に移動する階段で仲村が喜多川に声を掛ける。
「貴方達、なかなか、お似合いだったわよ?」
「だーかーらー、違いますって!!」
こうして、三人は他の部員達と合流。そこで、部長から喜多川が新部長から任命される事になるとは思っていなかったようだ。
「まぁ、色々と頑張れよ、新部長」
「遠野先輩も、ですよ」
そんな中、遠野が喜多川に声を掛けた。その後、下校時間まで部員達と楽しい時間を過ごした二人。色々あった高校生活も終わりを迎える遠野。そして、新部長となり新たな生活が始まろうとしている喜多川。傷付いたけれど希望を抱く事となった卒業式という一日。
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