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「戻りました」
「おかえりなさい。降られなかった?」病院の待合室には、眼鏡をかけた細面の男が一人。立ったまま、プラスチック製のマグカップでコーヒーを飲んでいる。歳は四十を超えているが、童顔にミスマッチな痩けた頬が年齢不詳にみせる。
「あ、ホットにしたんですか? 少し待っててくれれば」私が淹れたのにと言いかけて、「先生。それ私のマグカップです」と一段低い声。
「あれ? こっちだったっけ? あれ?」
「もう」と膨れる。「はい、シーフードでしたよね。先生、カップラーメンばっかり食べてないで、早くお嫁さん貰ってお弁当でも持ってきてくださいね」と受付カウンターの上にその日の昼食を置いた。
「美々ちゃんこそ。サラダだけじゃ身体が持たないよ?」
「夏に向けてダイエットです!」胸の前に両手を持って行き、グッと、こぶしを握りしめて見せた。
「女性が考えている程、男は細いウエストなんて魅力感じてないんだけどなあ」
ついさっきも似たようなセリフを聞いた、と思い出して、美々は吹き出しそうになった。
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