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そんな平凡な日常の一幕は、勢い良く開かれた鉄ドアの音によって、アッサリと幕を降ろす。
「やっ! これは失礼しました。重い扉だと思って勢い余ってしまいまして」低く太い声にしては柔らかい口調の男。寒空の下から来たにもかかわらず腕捲りしたワイシャツからは、鍛えられた肉体が顔を覗かせている。
「申し訳ございません。午後の受付は二時からに……」美々は言い終わる前に口を紡いだ。男の肩口から警察手帳が見えたからだ。
ワイシャツの男の後ろには、それとは対象的な、スーツ姿のスマートな男。こちらの方が一回り程年下に見える。「精神科医の一条寺先生ですね? ご協力お願いいたします」
「やめなさいって、そういうの。刑事ドラマじゃないんだから」
「身分証の提示は義務ですから」
「最近の若いのは頭が固くてどうも……。ああ、申し遅れました。捜査一課の海老原といいます」
「同じく。若山です」
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