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五十嵐幹也の場合 その1
桐生愛華は変わっている。
いつも、何処を見ているのか分からないボーッとした表情と態度をしているのに、クラスの中で誰よりも頭の回転が早い。きっと、この学校に在籍しているどの教員よりも切れる。
数学の学年主任が作る定期考査の最終問題は、満点が百二十点になる様いつも大学入試レベルの、二十点のおまけ問題が一つ作られる。点数が取れない生徒の為の救済措置だと言うが、そもそもそれが解ける様な生徒は数学が赤点になるかならないかの瀬戸際に追い込まれる事態にはならないので、無意味だ。ただ、彼は生徒の困る顔が見たいだけだ。
当然、彼のテストで百点以上を取れる生徒は居ない。桐生さんを除いて。去年一年生の二学期期末試験の時など、問題文の数字を変えた方が問題としての完成度が高いからと、回答用紙の裏側にその場合の数式と証明を書いて提出した位だ。勿論、テストは百二十点だった。実力試験の点数も、いつも全国上位に食い込んでいる。
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