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その時教授の手がすっと伸び、私は両手首を握られゼミ生達に見せつけられた。
注意する間もなく、すぐにかがんで今度は足首をじっと見つめ始めた。
「なんですか急に」
「なに。
非常に興味深い事実を、発見したまでだ」
どうやらもったいぶって、教える気は無いらしい。
「諸君、初回のガイダンスはここまでだ。
そんなことより、わんこ君。
もう一度事件を詳細に語ってくれたまえ。
事件前後の出来事も、漏らさずな」
「私の名前は一子です!」
やむを得ず、昼間の学食から法学部棟へ来るまでの経緯を、丁寧に語った。
ゼミ生達が時折メモを取るのに気付き、少し気恥ずかしい。
「スポーツ刈りの君。
わんこ君に対して、気付いた点はあるかね?」
「ほっそりした手首が、すごく綺麗でした」
「言いたいことは分かるぞ。
だが、事件の着眼点からは程遠い」
まさか私を、講義の題材として使うつもりなのか。
「勘の良い者には、分かり切った事だろうが。
手足が、タオル地で縛られていた点。
これこそ、事件解明の要だ」
教授は尊大に胸を張り、私に向き直った。
「さあ、わんこ君。
探偵学ゼミ生として、犯人像を推理してもらおうか」
「そんなの無理です」
「判断材料は、出揃っている」
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