一限目 にゃんこ教授とわんこ

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 その時教授の手がすっと伸び、私は両手首を握られゼミ生達に見せつけられた。  注意する間もなく、すぐにかがんで今度は足首をじっと見つめ始めた。 「なんですか急に」 「なに。  非常に興味深い事実を、発見したまでだ」  どうやらもったいぶって、教える気は無いらしい。 「諸君、初回のガイダンスはここまでだ。  そんなことより、わんこ君。  もう一度事件を詳細に語ってくれたまえ。  事件前後の出来事も、漏らさずな」 「私の名前は一子(かずこ)です!」  やむを得ず、昼間の学食から法学部棟へ来るまでの経緯を、丁寧に語った。  ゼミ生達が時折メモを取るのに気付き、少し気恥ずかしい。 「スポーツ刈りの君。  わんこ君に対して、気付いた点はあるかね?」 「ほっそりした手首が、すごく綺麗でした」 「言いたいことは分かるぞ。  だが、事件の着眼点からは程遠い」  まさか私を、講義の題材として使うつもりなのか。 「勘の良い者には、分かり切った事だろうが。  手足が、タオル地で縛られていた点。  これこそ、事件解明の要だ」  教授は尊大に胸を張り、私に向き直った。 「さあ、わんこ君。  探偵学ゼミ生として、犯人像を推理してもらおうか」 「そんなの無理です」 「判断材料は、出揃っている」
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