一限目 にゃんこ教授とわんこ

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 こうなったらやけくそだ。 「犯人は拉致とも呼べる、乱暴な手口を使いました。  ですが財布に被害は無く、金銭目当てでは無い。  つまり私に、深い恨みを持つ人物です」  ぱちぱちぱち、と教授の乾いた拍手。 「おまえは特別、目をかけてやる必要がありそうだな」 「正解でしたか?  学業成績には、自信があるんです」 「そうではない。  出来の悪い教え子ほど、可愛いと言っているのだ」 「何ですって!」  教授を睨む私の目つきは、きっと険しくなっていただろう。 「GPA3.5。  特待遇奨学生だったな。  ペーパーテストは得意らしいが。  どうも頭が固いと見える」  教授は私に歩み寄り、再び右手を掴むとゼミ生へ掲げた。 「拘束箇所に、跡が残っていないだろう」 「だからどうだって言うんです?」 「拘束するなら、手錠やプラバンドが早く確実。  途中でほどけることも、まずない。  それにも関わらず、犯人はタオルを使用した。  どういうことか分かるか」  誰も言葉を発しなかった。 「わざわざ跡が残らないよう、気を使ったのだ。  ずいぶんと優しい犯人じゃないか」  にわかに小教室が、ざわつき始めた。 「二十分ほど余ったが。  初回だから、ここまでとしておこう」  教授が配り終えたレジュメの余りを、ファイルにまとめ始めた。 「次回までに、わんこ君の事件についての推理を、レポート用紙五枚以内で提出すること。  必要ならば現場に出向き、五感をフルに使った調査を行うこと。  事件内容について質疑がある場合は、私にメールを寄こすこと。  本日の講義は以上」
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