一限目 にゃんこ教授とわんこ

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 火野の学生マンションを訪れた私は、インターホン前で立ちつくしていた。  十八時を十分も過ぎているが、どうも部屋番号を押す決心がつかない。  親友の三人に恨まれているなんて、考えもしなかった。 「わんこ遅いよ」  振り向くと、スーパーの袋にジュースを満載した水野が、微笑んでいた。  ぐいぐい背中を押されるまま、火野の部屋へ入る。  1LDKの小奇麗な居間に入ると、不意に紙吹雪が舞った。 「ハッピーバースデー、わんこ!」  ぱんぱん、とクラッカーが乾いた音を立てる。  木野が手に持った籠から、ひらひらと紙吹雪をまき散らす。  間違いようもない、文化学部棟で拾ったあの紙片だ。 「本当は英文棟の空き教室で、お祝いする予定だったんだけどね」 「せっかく、油断してるわんこ捕まえたのに」  火野と木野が、けらけら陽気な声を上げる。 「もしかして昼間の狼藉者は、本当にあんた達だったの?」  いえーい、と犯人グループがハイタッチを決める。 「サプライズのつもりだったの。  普通にお祝いするんじゃ、つまらないって火野が」 「人のせいにするなよ。  水野だって、ノリノリだったくせに」 「じゃあどうして、私を廊下に置き去りにしたの?」 「空き教室、わざわざ木野が借りてたんだけどね」
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