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そんな訳で講義が終わると、火野を引きつれ再び四号館へ向かった。
日光が直撃する昼とは違い、夕方の校舎は仄暗い。
嫌々ながら火野と、三階を見上げる。
案の定あの虚ろな顔が、私達を見下ろしているではないか!
幽霊の現れた場所を、指さそうとした時。
不意に火野が、驚いたような声を上げた。
「私達を見て、笑っていやがるのか」
「何言ってるの?
あれは泣き出しそうな顔でしょ」
意見の食い違いに気付き、私は凍りついた。
すると顔は、あっという間に姿を消した。
そして一瞬のうちに赤いワンピースの女が、四階の窓際に現れた。
「まさか瞬間移動を?」
女は不気味にうごめいている。
両腕をゆっくり上下に揺らす様は、まるで手招きでもしているかのよう。
更に前後左右と不規則に、体をぐねぐねと不気味に揺らし始めた。
信じられない光景を目にし、思わず火野の顔を仰ぎ見る。
「火野? どうかしたの?」
普段の勝気な表情はどこへやら。
血の気の引いた青い顔で、体を小刻みに震わせていた。
しかも両手で自らの体を抱きすくめるような仕草まで、見せているではないか。
「まさか幽霊が怖いとか」
「馬鹿言うなよ。
早くあの女を追いかけるぞ」
恐怖を振り払うかのように、威勢のいい声を出す火野。
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