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そして私達は四号館へ通じる入口の、ガラスドアを開いた。
「何の音だ?」
階上からはドアを乱打しているような、激しい音が聞こえてくる。
「知るわけないでしょう。
ほら、電気つけるよ」
パチリ、とセメント壁のスイッチを押す。
薄暗い階段に、蛍光灯の人工的な白い光が満ちる。
同時にドンドンドン、という音も嘘のように消えた。
三階廊下に、人の気配は無かった。
校舎側から見た場所は、入口から二番目の部屋だったはず。
教授権限で借りておいた鍵を、そっと鍵穴に押し込む。
すぐに顔をしかめて、鍵を引き抜いた。
「どうやら、長らく使われていないようね」
シリンダー内が錆びついているのか。
力任せに押し込んだり、左右へ細かく揺らしたりを繰り返し。
鍵が回るまで、優に五分を要した。
木製ドアをおっかなびっくり開くが、室内に光源は無い。
火野は電気のスイッチを求め、必死の形相で壁を手探りしている。
よほど暗闇が怖いのだろうか。
「あっ!」
びりっ、という紙の破れる音。
「駄目じゃない、備品を壊しちゃ。
ってこれ、お札じゃない?」
妖しく点滅する蛍光灯の下に、照らし出された光景。
それは壁一面に、びっしりと張られたお札だった。
「スイッチの上に張る方が悪い。
それより床を見ろよ」
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