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ぶつぶつつぶやきながら、顔が見えた窓とは反対側の空き教室四つを覗く火野。
「今は文化系サークルの倉庫として、使われているみたいよ」
「残る調査対象は倉庫だけか。
あいにく鍵を持ってない。
日を改めて、出直すとしよう」
どこかほっとした口調で、火野が愚痴をこぼす。
足跡の無い部屋。
ロッカーで塞がれた窓に現れた顔。
ドアを乱打したかのような騒音。
直後に四階へ現れた、赤いワンピースの女。
幽霊の謎が、私たちを嘲笑うかのように立ちはだかる。
一番気になるのは、火野と私の見た顔の表情が違っていたことだ。
でも私が見た顔は、見間違いなんかじゃなかった。
「気をしっかり持てよ、わんこ」
ぼんやりしていたらしく、火野にばんっと肩を叩かれた。
「赤いワンピースの女は、どこに消えやがった」
「私達とは反対側の階段から、降りたと思う」
「なんのために、こそこそと逃げ出す必要が?」
私は何も答えられなかった。
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