二限目 にゃんこ教授と幽霊

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 室内は雑然としていた。  壁には日に焼けたスペイン国旗。  去年の大学紹介のポスター。  一昔前のアイドルのピンナップ。  ドア近くへ、無造作に立てかけられた合板。  ビニール紐で縛られた、四年前の少年向け週刊誌。 「このアイドル、懐かしいな。  中学生の頃、大流行したっけ」 「分かるぅ。  高校でバイトして、ライブ行ったのぉ」  火野と統括長の思い出話をよそに。  私は獲物を探す猟犬の如く、部屋を物色していた。  とはいえ埃が舞うので、鼻にハンカチを終始当てているけど。 「ハイヒールね。  それにしては、やけにヒールが分厚い気が」 「甲部にゴムベルト。  裏のつま先とかかとには、釘が打ってあるな」    そのうち火野が、週刊誌に没頭し始めたので私達は退室を促された。  二つ目の部屋で真っ先に目を引いたのは、ペンキのかかったブロンズ像。  百五十センチほどの、少女の全身像だ。 「懐かしいですぅ。かつて父と部屋まで呼ばれ、お祓いをしました」 「どうしてまたお祓いを?」 「ある男子生徒が、ふざけあった時にぃ。  ペンキ缶をひっくり返したそうでェ。  直後に男子生徒は、交通事故で重体。  付き添いで来たサークル関係者内でも、事故や病気が多発したそうで」 「だから四号館へ、隠してしまったということですか」 「アメフト部の屈強な学生五人で、ようやく運び上げましたぁ」  けらけらと、おかしそうにサークル統括長が笑う。
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