二限目 にゃんこ教授と幽霊

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「せっかく教室まで来たんだ。  ここは一つ盛大に、練習光景を拝ませて貰おうじゃないか」  赤羽さんは、どこかためらう様子を見せた。  教授が鷹揚に頷き、入口ドアを開けた。 「では少しだけ」  赤羽部長は廊下へ消え。  タップシューズに履き替え現れた。  手にした薄い合板を、床へ倒し飛び乗る。  目にもとまらぬ速さで、靴底が板へ打ち付けられ耳を聾するほどの音が響く。  ざわざわ騒がしい向かいの大教室が、面白いほどしんとなった。 「音がうるさすぎるんです。  ついに他サークルから、苦情が頻発して」 「だから人目につかない場所に行った、というわけだ。  今日からは、学生ホールで練習してくれたまえ。  我輩が許可を得ておいた。  少々遠いが騒音を気にせず、練習できるだろう」  この日以降、赤いワンピースの女は目撃されなくなった。
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