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「せっかく教室まで来たんだ。
ここは一つ盛大に、練習光景を拝ませて貰おうじゃないか」
赤羽さんは、どこかためらう様子を見せた。
教授が鷹揚に頷き、入口ドアを開けた。
「では少しだけ」
赤羽部長は廊下へ消え。
タップシューズに履き替え現れた。
手にした薄い合板を、床へ倒し飛び乗る。
目にもとまらぬ速さで、靴底が板へ打ち付けられ耳を聾するほどの音が響く。
ざわざわ騒がしい向かいの大教室が、面白いほどしんとなった。
「音がうるさすぎるんです。
ついに他サークルから、苦情が頻発して」
「だから人目につかない場所に行った、というわけだ。
今日からは、学生ホールで練習してくれたまえ。
我輩が許可を得ておいた。
少々遠いが騒音を気にせず、練習できるだろう」
この日以降、赤いワンピースの女は目撃されなくなった。
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