三限目 にゃんこ教授と透明人間

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 午後一時半の、法学部棟小教室。  カリキュラム通りのレジュメを、正面の机から取る。  謎の自信に溢れた教授が、教壇で朗々と講義を始めた。 「本日は検死の重要性ならびに、司法解剖により他殺が判明した実例を挙げ――」 「はい、にゃんこ教授。  質問、質問いいですか」  火野が元気良く、右手をぴんと伸ばし挙手。  昼食後のいい眠気覚ましになる、とゼミ生からはもっぱら評判だ。 「積極的な質問は、いつでも歓迎するぞ」 「透明人間は実在しますか?」  ふむ、と教授が目を細める。 「興味深い質問だな。  わんこ君、説明してもらおうか」 「一子です。いい加減覚えてください」  教授のうながすまま、教壇へ上がらされる。  ゼミ生の好奇に満ちた目を受け、私は事件の概要を発表し始めた。
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