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「いい加減にしろ!」
都内のとあるオフィスの一室。
スーツに身を包んだビジネスマンとデスクが居並ぶ閉鎖空間で、
尊大な声が響き渡る。
「す、すみません……」
上司の叱責に、俺の身体が縮み込む。
「何について謝ってるのか、わかってるのか?」
「そ、それは……納期に間に合わなかったことです……」
「わかってるんだったら、俺を怒らせるんじゃない!!」
もう最初から怒ってるじゃないか。
しかも、どう答えても神経を逆撫でしてしまうような質問をぶつけてきやがっ
て……。
「先方にお詫びはしたのか?」
「はい……」
「いいか? この案件を逃すと、会社にとっては大ダメージなんだからな?」
まるで自分が一番会社のことを考えているんだと言わんばかりだ。
声も聞き逃すのが難しいほど騒がしい。
「お、お言葉ですが、これは元々課長の仕事では……」
「なんだ? 口答えするのか? 私は忙しいんだ!」
再度の恫喝に、言い返したことをすぐに後悔する。
「それにこの仕事をこなすことは、スキルアップになるんだぞ? 君のためでもあ
るんだ」
嘘つけ。
結局は成果を独り占めするくせに。
そう思ったが、今度は口に出さない。
「先方はいつまでも待っちゃくれない。明日の朝までには資料作成を終わらせろ」
「え……今日はもうこんな時間ですが……」
外はそろそろ夕焼けの時刻を迎えている。
だが予定される仕事量は、とても1日では終わりそうもない。
せめて誰か手伝ってくれれば……。
「あ!?」
「……何でもありません」
「いいか、明日までに終わらせるんだぞ!」
「…………はい…………」
俺はそう答えるしかなかった。
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