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「やばっ、もう終電の時間……!」
パソコン上の時計を確認すると、時刻は日付を跨ごうとしていた。
しかしまだやるべき業務は終わっていない。
「明日、早出で作業するか……」
徹夜で仕事する選択肢もないことはないが、流石にシャワーくらい浴びたい。
眠気も強くなってきたので、今すぐ横になりたいくらいだ。
「…………帰ろう」
そう力なく呟き、パソコンをシャットダウンする。
「……もう誰もいないな」
一心不乱に仕事に集中していたら、いつの間にか周囲はもぬけの殻になっていた。
当然、自分に怒鳴り散らしていた上司の姿もない。
「……ちっ」
人に仕事押し付けるだけ押し付けやがって……。
自分は大したことしてないのにさっさと帰りやがった。
他の人達も大概だ。
上司が完全にいなくなったのを見計らって、フェードアウトするように消えてしまっ
た。
君子危うきに近寄らずといったとこか。
同じ会社の仲間であるはずなのに、連帯意識はからっきしだ。
「そりゃ……ミスした俺が悪いんだけどさ」
自分でも今回の案件の失敗は身に染みている。
名誉挽回するには自分で取り返すしかない。
それはわかってるんだが……。
「考えても仕方ない」
ため息をつきながら、室内灯を消し、セキュリティを通ってオフィスから退出した。
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