第一章 プロローグ

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「やばっ、もう終電の時間……!」 パソコン上の時計を確認すると、時刻は日付を跨ごうとしていた。 しかしまだやるべき業務は終わっていない。 「明日、早出で作業するか……」 徹夜で仕事する選択肢もないことはないが、流石にシャワーくらい浴びたい。 眠気も強くなってきたので、今すぐ横になりたいくらいだ。 「…………帰ろう」 そう力なく呟き、パソコンをシャットダウンする。 「……もう誰もいないな」 一心不乱に仕事に集中していたら、いつの間にか周囲はもぬけの殻になっていた。 当然、自分に怒鳴り散らしていた上司の姿もない。 「……ちっ」 人に仕事押し付けるだけ押し付けやがって……。 自分は大したことしてないのにさっさと帰りやがった。 他の人達も大概だ。 上司が完全にいなくなったのを見計らって、フェードアウトするように消えてしまっ た。 君子危うきに近寄らずといったとこか。 同じ会社の仲間であるはずなのに、連帯意識はからっきしだ。 「そりゃ……ミスした俺が悪いんだけどさ」 自分でも今回の案件の失敗は身に染みている。 名誉挽回するには自分で取り返すしかない。 それはわかってるんだが……。 「考えても仕方ない」 ため息をつきながら、室内灯を消し、セキュリティを通ってオフィスから退出した。
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