第3話 職業:まほうつかい

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 怒り狂う――というより狂い怒った赤毛の少女が、ポニーテールを振り乱しながら叫ぶと――彼女の背後に、数えきれないくらいの水の玉が現れた。 『ちょ、ちょっと落ち着いて、マリスタ! 私は大丈夫だからっ』 『乙女の敵は――――問答無用で粉砕(ふんさい)ですっ!!』  少女はブロンドの髪を持つ女性同様、()()けた服の胸元を両手で押さえながら俺を(にら)みつける。その顔の横ではゆっくりと回転している――球形(きゅうけい)の水の(かたまり)。  滞空(たいくう)した、人の顔ほどもある水の塊。それが少女の声に呼応するようにして――俺へと真っ直ぐに放たれる。 「!?」  投球のように迫る水を身をかがめ、(あわ)てて避ける。体勢を崩し、四つん()いになって逃げる俺の背後で、複数の水玉が弾ける音が聞こえた。  いいや。水玉というより、あれは――本当に水の弾丸。 『逃がさないわよ変質者っ!』 「! ッ、」  突然、目元に衝撃。同時に、ぬるりとした不快な感覚。  しまった、跳ねた泥か――――!  そう思ったときには、顔面に特大の張り手をされたような衝撃を受けていた。  鈍い痛み。遠のく音。倒れ込む体。その衝撃も相まって揺れる脳。  次から次へ起こる超常現象が。衝撃的な記憶が、頭に(あふ)れ返り。  程無(ほどな)く、俺の意識は暗転した。
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