第1話 触れる唇、つながる体は其の者の名を

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「……じゃあ最後に一つだけ。ちゃんと付き合う友達は選びなさい。友達多いんだし、二年間一緒のクラスだったんだから、分かるでしょう」 「友人は選んでますよ。失礼しました」  引き戸を閉め、担任の姿が見えなくなる。  間もなく声をかけられた。 「オイおせーよ、あんま待たせんなよ」 「先に行っててくれって言っただろ」 「お前をイクミちゃんと二人っきりにしておけっかよ」 「どういう意味だ?」 「ちっ、イケメンめ」 「ジゴロ野郎がよ……さあ、はやく行こうぜ」 「あー、彼女欲しー」  廊下で待っていた、いかにもな風貌(ふうぼう)の不良たちに続く。  周りから見れば、俺も立派な同類なんだろう。 周りから見れば、俺も立派な同類なんだろう。 ◆     ◆ 「天瀬圭(あませけい)。よく分かんないやつですよね」 「何を考えてるんでしょう、あの子。二年担任してますけど、いまだに(つか)み切れなくて」 「成績優秀、眉目秀麗(びもくしゅうれい)。クールに見えて、いざ話してみると人当たりは良くて、文化系から不良グループまでと、男女問わず交友関係は広い。その一方で一線引いて、過度に人と仲良くしようとはしない……そのミステリアスさが、(はか)らずも女生徒達の注目をより集めている。ハハ、こんなに出来すぎたスペックを持ってる奴も(めずら)しい」 「二日前も、女生徒に告白されていましたよ。にべもなく断っていたようですが」 「二日前も、ですか? なんとまぁ……私は十日くらい前にも見ましたがね」 「でも、最近は成績がガタ落ちなんですって?」
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