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「はい……去年の冬から一切勉強をしなくなったみたいで。そのくせ……見てくださいコレ!」
「どれどれ……ははは! こりゃ面白い。全教科きっちり赤点プラス一点じゃないですか」
「器用なのか不器用なのか……おちょくってるとしか思えません」
「ああ見えて、構ってほしいだけかもしれませんね。彼って確かもう、施設を出ちゃってるんですよね」
「は、はい。高校入学と同時に」
「ああ、知ってます。施設長がずいぶん止めたらしいですよぉ、高校卒業までは居ていいって。あの年頃の男子が一人暮らし三年目……辛いことはあるでしょうね」
「でも、構ってほしいだなんて」
「しかも火事で家族をみんな亡くしてるんですよね? 十年前ですっけ……きっと愛情に飢えてたり、まだ傷が癒えていなかったりするんだと思いますよ」
「……そうなんですかね、やっぱり。十年前の」
「こう言うと不謹慎ですが。話せば話すほど、出来すぎた境遇の奴ですな」
「外から眺めてる分にはねぇ」
「そうですね。でもだからこそ、少しでもあの子を……」
(…………あの子の内側を……いいえ、彼を理解したい。力になりたいって、思うの)
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