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失恋の始まり
三十三回目。
今日も私は、彼に想いを伝える。
「好きです。付き合って」
「やだ」
誰もいない放課後の下駄箱で、上靴から白いシューズに履き替えようとしていた南野奏多君を呼び止め。、私は告白した。
けれど結果は、いつもと同じ。
相変わらずの素っ気ない態度でバッサリと断ると。南野君はそのまま颯爽と出て行ってしまった。
男の子にしては細すぎるその後ろ姿は、きっとこの学校の生徒の中では誰よりも堂々としていて。たくましい。だから独りでも強く生きていけるタイプなんだと……最初はそう思っていた。
けれど、ずっと彼だけを見ていて気付いた。
彼は独りでいるために、そう見せているだけなんだと。
「あ、由香里!どうだったぁ~?まぁ……なんとなく予想は出来てるけど」
「ダメだった」
「だろうね。んで?これで何回目の失恋?」
「三十三回目」
「凄いね……私だったらとっくに諦めてるわ」
「そう?」
告白に失敗し。鞄を取りに教室へ戻ってきた私を待っていた友人の霧崎佳奈は、何故か私の席で堂々と漫画を読んでいる。自分の席があるというのに。
「そうだって。というか、普通そこまで断られたら脈ないって分かるし。新しい出会いを探すって普通」
「無理だわ。だって南野君しかきっと好きにならないし。私」
「いやいや。これからの人生、何があるかわかんないよぉ?」
「これからの人生で、南野君よりいい人が現れても。多分私はその人を選ばない」
「一途過ぎて、逆にヤバいな」
「そう?」
他の友達にも似たようなことを言われた。
なんで諦めないのか?なんで南野君がいいのかと。
佳奈も、未だ漫画を読みながら呆れたように苦笑いを浮かべている。
私のやっている事は、そんなにも可笑しな事なのだろうか?
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