第1章

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 うるさいほどのセミの声に、どこまでも続く深い緑。夏休みに行ったおばあちゃんの田舎は、去年とまったく変わらないように見えた。  僕は車から飛び降りると、おばあちゃんちの玄関にむかってダッシュした。 「おばあちゃん!」  僕が勢いよくドアを開けると、おばあちゃんはニコニコ出迎えてくれた。  外が明るくて暑かったから、かけこんだ家の中はひんやりして暗い気持ちいい。 「いらっしゃい! もう健也(ケンヤ)君も来てるよ」 「ホント!」  ケンヤというのは、僕のイトコだ。遠い所に住んでいるので、夏休みくらいにしか会えないけれど、ラインやツイッターでちょくちょく連絡をするくらい仲がいい。  居間をのぞくと、そのケンヤが麦茶を飲んでいた。 「あ、ショウ!」  僕に気づいたケンヤが、僕の名前を呼んで立ち上がる。 「ケンヤ、ちょっと背伸びたんじゃねえか? てか、日焼けすげえな!」  スマホでやり取りしていてお互い元気なのは知っているけれど、やっぱり実際に会うと嬉しい。     
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