2人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「おお、ケンヤ君大きくなったなあ」
父さんがひょいっと戸口から入ってきた。
「お前たち、さっそく遊びに行くつもりか? 元気だなあ」
大人たちのながったらしいあいさつは大体終わったみたいだった。みんな仏様の部屋から居間にぞろぞろやってくる。
「うん、山に行ってくる」
「気を付けるのよ」
と、お父さんのあとについてきたおばあさんが、心配そうに言ってきた。
「あまり山の奥には行ってはいけないよ。人ではないものがいるからね」
「人じゃないもの? ヘビとかハチとか?」
ケンヤが言った。
僕も、人じゃなくて危ないものっていったら、そんなのしか思い浮かばない。
「ああ、もちろんそれも怖いけどね。私が言っているのはお化けみたいな物だよ。山には魑魅魍魎(ちみもうりょう)がいるからね」
「チミモウリョウ?」
それがどんな生き物かは分からなかったけれど、なんだかとっても怖い物に思えた。お化けみたいなものっていうから、カッパとかくねくねとかと同じようなものだろうか? 妖怪みたいな?
「ちょっとお義母(かあ)さん! お化けだなんて子供が怖がるからやめてください」
お母さんが少し怒ったように言った。
「あら、ごめんなさい」
最初のコメントを投稿しよう!