第1章

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「おお、ケンヤ君大きくなったなあ」  父さんがひょいっと戸口から入ってきた。 「お前たち、さっそく遊びに行くつもりか? 元気だなあ」 大人たちのながったらしいあいさつは大体終わったみたいだった。みんな仏様の部屋から居間にぞろぞろやってくる。 「うん、山に行ってくる」 「気を付けるのよ」  と、お父さんのあとについてきたおばあさんが、心配そうに言ってきた。 「あまり山の奥には行ってはいけないよ。人ではないものがいるからね」 「人じゃないもの? ヘビとかハチとか?」  ケンヤが言った。  僕も、人じゃなくて危ないものっていったら、そんなのしか思い浮かばない。 「ああ、もちろんそれも怖いけどね。私が言っているのはお化けみたいな物だよ。山には魑魅魍魎(ちみもうりょう)がいるからね」 「チミモウリョウ?」  それがどんな生き物かは分からなかったけれど、なんだかとっても怖い物に思えた。お化けみたいなものっていうから、カッパとかくねくねとかと同じようなものだろうか? 妖怪みたいな? 「ちょっとお義母(かあ)さん! お化けだなんて子供が怖がるからやめてください」  お母さんが少し怒ったように言った。 「あら、ごめんなさい」     
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