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おばあちゃんは慌てて言った。
なんだか急に怖くなって、話を聞いたときの姿勢のまま僕は少し固まってしまっていた。
「なにビビッてんだよショウ! 大丈夫だよ! 早くいこうぜ!」
せっかちなケンヤが僕の腕をつかんでひっぱった。
「あ、う、うん」
僕はひっぱられるまま玄関にむかう。
「じゃあ、行ってくるね!」
ケンヤの嬉しそうな声を聞くと、怖い気持ちもなくなって、僕はなんだかだんだんワクワクしてきた。
僕たちは靴を履いて外へ飛び出した。
漂い始めた線香の匂いが、僕たちの後を追いかけるように流れて消えた。
網に捕まったセミは、大きな鳴き声をあげた。多分、人間だったら悲鳴をあげているのだろう。
虫カゴ代わりにしていたボクの水槽の中には、もう三匹のセミが捕まっている。
「そろそろ放してやろうか」
ケンヤが言った。
僕たちはセミが何匹か集まったら逃がすことにしていた。
なんでもセミは一週間しか生きられないとかで、持って帰ると僕の母さんもケンヤの母さんも「かわいそうだ」怒るのだ。
僕はフタを開けて、水槽を叩いた。セミたちがパニックになりながらバラバラに飛んで逃げていく。
「あれ?」
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