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「すまん。サッちゃんが好きで、思わず買ってしまった」
「おにいちゃん、私も大好きです。嬉しい」
そう言ってまた抱きついてきた。
僕は、嬉しさと共に、少し戸惑っていた。何故、小夜子が僕(なんか)を好きなのか?
妄想ではなく実際に小夜子を抱いたこの状況を考えると、小夜子の冗談や気の迷いでは無さそうだが、正直、僕には自信も好かれる根拠も無かった。
「いつから(好きだったの)?」
「一緒に小学校に通っていた時から。特に、あの時から」
僕達がまだ子供の頃、ちょっとしたアクシデントがあった。
親の言い付けで、小夜子を学校に送っていたのは、既に言った通りだ。
帰りは、終業時間が異なるので別々に帰っていた。
ある日、友達の家にでも寄っていたのだろうか、小夜子が僕の50mほど先を歩いているのが判った。
学校への通学を仰せつかっている僕としては責任上、帰りも見かけた時には一緒に帰った方が良いのだろう、と思ったが、実は、その時から淡い恋心を小夜子に抱いていた僕は、それがわざとらしい気がして、50mの距離のまま近づけずにいた。
小夜子は角を曲がって家の方に向かっている。
僕もしばらくして角を曲がって、驚いた。
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