ラブドール

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30歳ぐらいの男が、小夜子の腕を掴み車に連れ込もうとしていた。小夜子は、必死に抵抗していた。 僕は全速で走って、後ろから男に腰あたりに体当たりした。 男は不意を突かれ前のめりにこけ、小夜子の腕を放した。 「逃げろ」僕はそう叫んだが、小夜子は座り込んだまま動けなかった。 僕は小夜子の腕を掴んで、走り出そうとしたときに、起き上がって来た男に後ろから突き飛ばされ、突っ伏した。 振り返ると、小夜子を抱きかかえるように引きずり、後ろずさりに車に向かった。僕はすぐさま、男の足にしがみついた。男はバランスを崩し今度は仰向けに倒れた。倒れても、小夜子を話さなかったので、男の腕に噛みついた。 「痛い」そう叫び、再び小夜子を離し、僕に本気でも向かって来た。 顔を思い切り殴られ、星が飛ぶというのは本当なんだ、と思いながら倒れ込んだ。 もうまともに歩ける状態では無かったが、男が小夜子に向かおうとしていたのを認め、半分、四つん這いになりながら、再び男の足にしがみついた。 勢い無く、しがみついただけなので、男は体制も崩さず、そのまま足を振り抜いた。 僕は塀まで飛ばされ思いっきり背中を打って落ち、多分数秒、気を失った。 「いや!」という小夜子の声で気がついた。男が後ろから小夜子を抱えて車の方に移動しようとしているのが見えた。     
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