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僕はほとんど動けなかったが、最後の力を振り絞り、小夜子にしがみついた。
男は小夜子と小夜子にしがみついた僕を引きずるように、車の方に1~2メートル移動した。
その時、たまたま通りかかった、別の男性がその状況を認めた。
「何をしている!」大声をだし、走って近づいてきてくれた。
男は僕達を離し、逃げた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」という小夜子の声を聞きながらも、僕はもう動けず、そのまま気を失った。
結局僕は、その日から1週間入院することになった。
男は逃げたが、車のナンバーから直ぐに捕まった。通りかかった男性は、子供達を救った英雄になった。
僕は小夜子共々、その男性に助けられた子供達として扱われていた。
必死に小夜子を助けようとしたのに、単に助けられた子供として扱われ、悔しくなかったのかと言われそうだが、実は全く悔しくは無かった。
あのままだと絶対に小夜子を助けられていなかったのを、あの男性が助けてくれたのは事実で、僕は小夜子が無事だった事が嬉しかった。
だから僕もあの男性に感謝していた。
反対に、僕だけでは小夜子を守り切れそうに無かった事が気になっていたし、それで小夜子が僕をに失望しているのではと、少し心配していた。
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