ラブドール

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入院中も一緒に通学するという役目を(役に立たないと思われ)取り上げられないか、心配だった。 だから、退院後、前と同じように通学できて嬉しかった。 これは後で聞いた話だ。 小夜子はそうでは無かったようで、何度も自分を助けたのは僕だと主張したが、大人達は「僕達(小夜子と僕)」を救ったその男性を褒め称え、僕を単に暴漢に襲われた子供として扱ったので、悔しかった、と言っていた。 一人っ子の小夜子は僕を兄のように慕ってくれていたが、その一件以降、自分を命がけで守ってくれる異性として意識しだしたと言っていた。 そして好きになればなるほど、意識してしまって少しぎこちなくなったと。 だから、僕が小学校を卒業し一緒に通学しなくなった後(家が近いので)時々、出会うのだが、その時の会話も嬉しいのに、なかなか話し込めなかったらしい。 実は、僕はもともと小夜子が好きだったので、常に緊張して少しよそよそしかった。ぼくのそのぎこちなさが、小夜子から見れば、自分をそんなに好きでは無いのではと思わせたようだった。 それにも関わらず、その一件以降、小夜子は僕だけをずっと想いつづけてくれていた。そういう思いで振り返れば思い当たる事が何点かある。     
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