土曜日の恋（ラブ・ドール）

ラブドール

住む場所も、僕は知らなかったのだが、荻窪の僕のすぐ近くに引っ越してきていた。
そして、小夜子はわざわざＪＲに乗っていたので、つまり、たとえ一緒に会社を出ても変える方向が違うので、まさか近くに引っ越してきているとは思わなかった。

気になってたまらなくなり、合い鍵で部屋に忍び込んだらしい。まるでストーカーだと自己嫌悪に陥ったと言っていた。
でも、どうしても気になったと。

何故、小夜子が合い鍵を持っているのか？
僕は彼女に言われて思いだしたのだが、小夜子が学生の時に、友達とディズニーランドへ行くのにホテルが取れないとかで、部屋を貸した事があった。
帰省前に親から電話があり「お前が帰ってくるならその間、部屋を貸してやれ」と言われたので、合い鍵をもって帰省した。
もちろん、いつもは乱雑な部屋を、一応掃除はしておいた。

そして、帰省したときに鍵を渡し、住所と入口のロック解除の暗証番号を教えた。

帰省から戻ると、ディズニーのクッキー一箱とお礼を書いた友達との連名の手紙がテーブルの上に置かれていた。

しかし、小夜子は鍵を返さなかったし、僕もその事に気が付かなかった。何せ、自分の持っている鍵でいつも通りに住んでいたので。

小夜子は有休を取り、僕が出勤している間に部屋に入ったと言った。