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ただ、申し込む前から、断られるのだろうと課長は思ったらしい。食事に誘っても、小夜子は大変丁寧な接し方だが、慎重に交際の話題を避けていた。
その相手への気遣いや人間性の高さに、課長はさらに惚れ、断られるのが判っていても、ハッキリさせるために申し込んだと言った。
「断られれば諦め付くだろう」課長はそう言った。
「まあ、玉砕だな」ため息交じりに、でも、スッキリしたと言った。
誰かと付き合っているの? 静かに尋ねた課長に
「自分には長い間、片想いの相手がいるが、嫌われるのが恐くて言い出せない」
と答えたと言う。
「彼女にそんなに思われる相手って、誰れなんだろうなぁ」課長はしみじみ言った。「よほど凄い奴なんだろうな」と言ってため息をついた。
そして、僕を見て「案外、幼なじみのお前じゃ無いのか?」と言ったので、僕は吹き出した。
「それは今年一番のジョークですね。こんなに冴えず、モテない僕が?」
「あのなぁ、お前は冴えないんじゃない、女性から縁遠いだけなんだ。いつも真面目過ぎて、女性に興味はありません、などという雰囲気を醸し出している」
「そう・・・なんですか?」
「ああ、そうだ。会社の女の子が何と言っているか知ってるか?」
「え?」気味が悪いとかいう悪口かと思い、身構えた。
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