土曜日の恋（ラブ・ドール）

ラブドール

「小林さん（僕の事だ）はたとえ女性と裸で一緒のベッドで寝ていても、何もしなさそうね、だって」

「・・・」これは、真面目だと思われているのを喜んで良いのか、空気のような存在だと言われているのを悲しんでいいのか迷った。

「真面目だと思われるのは良いが、男としては少し情けなくないか？」僕の気持ちを見透かしたように言った。

「それにいつも言ってるが、お前は本当は優秀なんだ。お前の課題に対する考察はいつも正しく、的確だ」

「問題は、それを自分から表現しないことだ。いつも人に流され、まあ、いいか、と自分をコロしている事だ。お前がその気になれば、周りにいる連中は束になっても叶わないんだけどなぁ」

「でも、それが僕ですから。もの心、付いたときからそうなので、これは直らないですよ」課長がそこまで買ってくれていて、少し嬉しかった。

「う～ん、もったいないなぁ」

そうしみじみ言ってから、

「彼女には、好転させるためには、思い切って君から動かなければね、とけしかけて置いた」
と言った。

「課長が踏み出したように？」

「そう！　たとえ結果がダメであってもだ」と、しみじみ課長が言った。

課長が「お前じゃ無いのか」などと変なことをいうものだから、妙に意識したのか、そのころから時々、ラブドールが動き出したような気がする。