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それから、娼婦が、漁師が、詩人が、学者が、傭兵が歌を聞いた。歌は三日夜空で鳴っていた。
七日目の夜、歌はいよいよ大きくなった。
詩人が言った。「歌が我々に尋ねている」と。
羊飼いが、巫女が、娼婦が、漁師が、学者が、傭兵が耳を傾けると、歌は確かに我々に向かって尋ねている。
7人は歌に「イエス」と答えた。
夜空が光り、月が割れた。そして彼が現れた。
「これが聖書における有名な冒頭の部分です。俗にいう”7人のイエス”が彼との間に旧神と戦いうる力を得るための契約を結んだとされる場面です」
サー・イズラエル・ギャッレットの淡々とした声が、教室に響いていた。ユウキは教室の比較的後方、さらに隅の方というおよそ真面目な生徒が座り得ない席に腰を下ろし、その声が耳から入っては出ていくのを感じていた。
「ふあ?」
欠伸が漏れる。サーの声は、子守唄だ。
教室には倦怠感がまとわりついている。授業を受ける他の生徒も居眠りをしているか、携帯端末を堂々といじっているかだ。なんたってサーの授業の売りは、出席さえしていれば単位がもらえることであるから仕方がない。
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